No.3【試合分析】日本対インドネシア(アジアカップグループステージ-第3節-1月24日)

日本代表

試合の展望

 アジアカップグループステージの第3節。引き分け以上で日本は突破が決まる。前節とはスタメンが大きく異なるため、どのように戦うのか。対するインドネシアは、グループステージ突破には、この試合、勝ち点が欲しいところ。日本が敗れたイラク戦を分析しているはずなので、どのように戦ってくるか見物。

前半

 スタメンは以下の通り。

スタメン

 日本は、遠藤をアンカーにした4141でスタート。今までの2試合は、守田と遠藤がDMとなる4231を基本とし、守田が時折高い位置をとる戦術を採用していた。しかし、今節はスタメンの旗手が、久保と並ぶ形を採用。

 対するインドネシアは541。攻撃時には343となる。ベトナムと似たようなポジションを採用。比較的、後ろからつないで攻撃をしようとしている印象。また、スローインになると、ロングスローを使用してくる。

 試合は日本がボールを保持して進む。前半すぐに、ポケットに抜け出した上田がPKを獲得。これを決め1-0と幸先のいいスタート。

 日本のビルドアップは、41で形成し、IHの2人は、必要に応じて下りてくるが、基本は高い位置を取る。WGの2人が幅を取り、CFとWGの間にIHの2人が位置する。SBは、WGのポジションに応じて、内、外、低い位置を取る。WGにボールが出ると、SB及び近い位置のIHが、ボールを受けるためのポジションを取るといった、シンプルな4141の戦い方。

 前半から、毎熊のポジショニングが良い。毎熊は、堂安とコンビを組んでいるところ、堂安が中に入ると外側を、堂安が外にいると、低い位置か中で高い位置を取る。ただ、久保が近くにいるときは、久保とも被らないポジションを取る。毎熊は周りをよく見たポジションを取れている。毎熊が素晴らしいのは、「適切なポジションを取っていること」だけではない。「適切なポジションを素早くとっていること」である。そうすることで、➀堂安や久保に早めにパスコースを与えること、そして、➁周りも素早く連動してポジショニングを取ること、ができる。ポジショニングの技術というのは、立ち位置だけでなく、そこまで移動するスピードも含まれるのである。

 さて、今節の日本代表だが、今までの戦いと大きく異なる点が2つある。

 それは、➀攻撃時、選手間で比較的近い距離感を保っている➁攻撃時、バックラインを高くし最前線までコンパクトに保つ、という点である。

 ➀について、例えばサイドでWGやSBがボールを持った時、近いIHの選手は近い位置を取り、その選手を孤立させない。遠いIHも、ボールサイドに寄ってくる。逆サイドのWG(あるいはSB)は、幅をある程度とったままのこともあるが、それ以外の選手はコンパクトな距離感を保つ。これは、ボールホルダーを孤立させず、かつ、細かいパスワークで相手を崩しやすいよう意識したものである。こうすることで、ボールホルダーに対し、3人目、4人目の選手が動き出し、ボールを受けることができる。イラク戦は、やや選手間の距離があったため、ボールホルダーへのフォローが少なく、3人目以降の動き出しが見れるシーンが少なかった印象。また、旗手、久保が高い位置におり、かつ、このような距離感をキープしているため、上田にボールをつけても、彼にパスコースがないといった事態にはならず、上田もやりやすい。

 ➁について、今節は、押し込んだ段階でバックラインを非常に高く設定していた。これは間違いなく富安の影響であろう。彼が所属するアーセナルは、押し込んだ段階ではバックラインを高く全体をコンパクトに保ち、ボールを奪取された直後、すぐに再奪取を試みる。その戦術を意識したものであろう。例えば、以下のシーンを見てみる。

23分、ボール奪取をされた際のポジション

 上田がボールを奪取された直後だが、全員が相手のエリアに入っている。これだけコンパクトにされると、インドネシアとしては、ボールを奪っても、大きくクリアするか、苦し紛れのパスをつなぐことしかできない。パスをつないでも、ボール奪取直後は、ポジションが適切にとれていないため、次に続かない。このシーンは、最終的に、毎熊がボールを奪取しフィニッシュまで持ち込んでいた。

 さて、試合はずっと日本ペース。インドネシアにまともな攻撃をさせない。日本の上記守備戦術により、インドネシアにボールを持たせていないこともあるが、ベトナム、イラクと比べて、フィジカル、技術的に劣っている印象。戦い方も、日本の嫌なことをするなどもない。過去2試合より寄せも甘いため、日本の選手は時間が作れる。

 日本は、ボールホルダーへのフォローが豊富で、流動的なポジションを取りながら、細かいパスワークで深い位置までボールを運ぶ。先述のように、3人目の動きについては、とても意識している様子。加えて、押し込んだ段階では、逆のSBがクロスに合わせるため、ペナルティエリア内まで入ってくる。これは、全体が常にコンパクトなポジションを取っており、後ろの選手もペナルティエリア内までの距離が近くなることから可能となっている。この2つが顕著に表れたのは、43分のシーンである。

43分のシーン

 中山が左でボールを持った段階で、全体が左に寄っている。ここでは、近くに4人がいるため、フォローは十分。さらに、注目は、毎熊のポジショニングである。中央に位置し、いつでもペナルティエリア内に飛び出すことができる。

 中山は、中から外に抜け出した久保にパス。中では、上田と堂安、そして後から入ってきた毎熊。堂安が空けたスペースに毎熊が飛び込んで折り返し、最後は上田。得点にはならなかったが、日本の狙いが存分に表れたシーンであった。

 チャンスを再三作るも、日本は追加点を奪えず、前半終了。

後半

 選手交代なく後半開始。相変わらず日本ペース。インドネシアは、やや前からプレスに来るが、練度が低い。前から選手が行っても、後ろが高い位置を取れず、中々はまらない。それどころか、54の間にスペースを与えてしまい、そこを取られるシーンが目立つ。特に疲れからか、後半の中盤以降はこれが目立つ。

 日本は、51分、堂安から中村、そして再び外を回った堂安がクロス。中で旗手がつぶれ、ファーで上田が合わせ2-0。崩しも良かったが、中に旗手、上田、中村、毎熊と4人も入ってきていた点が良い。クロスに人数をかけることについては、イラク戦からしっかり修正されている模様。

 日本は、53分のロングカウンター、60分のロングボールから堂安が決定機を迎えるが決めきれない。この60分のシーンは、前がかりに来ている相手の裏を1発で突いた。このようなロングボールから裏という戦術は、日本の選手はあまり好まない。しかし、以後、決勝トーナメントでは、相手チームがハイプレス・ハイラインを採用してくるかもしれない。浅野、前田らを使うのであれば、積極的に狙っても良いであろう。

 日本は、67分に中村、旗手を下げて前田、南野。80分には富安、久保を下げ、渡辺、佐野を投入。佐野を入れたことで、4141から4231気味になる。85分には、堂安を下げて伊東純也を投入。

 87分、右で毎熊が持ち、裏に抜けた伊東純也にスルーパス。クロスから最後は上田のゴール(公式はOG)。3-0とし、試合を決める。

 90分に1失点するも、3-1で日本の勝利。2位で決勝トーナメント進出を決める。

総評

戦術

 日本は、個々の選手の距離感をコンパクトにしボールホルダーへのフォローを増やす、攻守にわたりバックラインを高く保つ、SB含めクロスに多くの選手が反応するといった点を意識して戦っていたが、全体的に良い戦い方であった。1,2節のように可変の形を取るよりは、基本はシンプルに4231、4141で幅を取りつつ、上記点を意識した戦いをした方が良い。

 特に、選手間の距離感が今までで一番良かった。選手間の距離というのは、近い方が良い場合と、遠い方が良い場合がある。これは、ボールホルダーとのポジション関係、選手の特徴や状況ごとに異なるが、日本の選手についていえば、基本的には、近い距離感でプレーをした方が良い。この点、イラク戦は、選手間の距離が遠く、ボールホルダーへのフォローが少なかった。今節では、それが改善されていた。

 ただ、インドネシアが今までの相手と比べて、すべての面において劣っていた点も忘れてはならない。そのため、今節の結果をあまり過大に評価すべきではない。

個人

 全体として、攻守の切り替えも早く、相手に厳しく行けていた。富安は、すべてにおいて素晴らしい出来。やはり外せない選手である。毎熊は、ポジショニングだけでなく、ボールを持った時もシンプルなプレーができていた。この出来なら、今後は、菅原より毎熊を使うことになるであろう。旗手、久保は、連動性をもって良いプレーができていたが、ややしょうもないロストが目立ったか。堂安は、決定機を決めきれなかった点が痛い。上田はゴールという素晴らしい結果を残した。ただ、この程度の相手なら、もう少しポストプレーの精度を高めたいところ。

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