No.1【試合分析】イプスウィッチ対リバプール(24/25プレミアリーグ-第1節-8月17日)

24/25

前半

 スタメンは以下の通り。

スタメン

 リバプールは、昨年まで採用していた433ではなく、4231を採用。そのためか、スタメンであった遠藤が外れ、マクアリスターとフラーフェンベルフがDMに入る。

 試合は、リバプールがボールを持ち、イプスウィッチが前から守備をするという入り。リバプールは、変則的な334の形をとり、後ろからボールを運ぶことを試みる。

リバプールのビルドアップ基本形

 低い位置でのボール保持時、アーノルドは、昨シーズン同様にDMの横に入る。他方で、ロバートソンは、サイドの高い位置を取るのではなく、CBの横に立つ。そうすることで、後ろは33の形となる。ここで、GKを含めた三角形の形を保ち、パスコースを常に確保しようとする。

 WGは、クロップ体制と同様に、ある程度ワイドで高い位置を取る。そこで、ビルドアップが上手くいかなかったときに、足元、あるいは裏で、ロングボールを受ける役割を担う。また、カウンター時には、まず初めに裏の選択肢を取る。これも、去年まで、クロップに求められていたものと同様だ。

 前半のリバプールのビルドアップは、イプスウィッチの守備にひっかかる。これは、リバプールのスロット体制が始動したばかりというのもあるが、イプスウィッチの守備が良いためだ。イプスウィッチは、442でハイラインかつ、人基準の守備をとり、相手陣地では、積極的にボールを奪いに行く。近年、可変かつ変則的な形のビルドアップは、多くのチームの基本戦術となっている。これに対する有効な守備(少なくとも、高い位置において)は、ゾーンではなく、おおむね人基準で守備をすることだ。イプスウィッチは、これを忠実に実行し、リバプールの攻撃を阻み、ショートカウンターでチャンスを作る。

 さて、リバプールはビルドアップの際、2枚のDMには、少し異なる役割が与えられている。フラーフェンベルフは、中央にとどまることが多く、ポジションを微修正しながら、ボールの受け口になる。これに対してマクアリスターは、中央にとどまるだけでなく、ロバートソンが空けたポジションでボールを受け、ボールが前線に入った場合、そこから高い位置でフォローに入る。これは、去年までのクロップ体制において、1枚のDMに求められていたものとは決定的に異なる(それゆえ、遠藤がスロット体制にフィットしていないと言われるのであろう。)。

 また、SBにも異なる役割が与えられている。アーノルドは、ビルドアップが上手く行った後も、中央にとどまり、そこからボールの配給役になる。対してロバートソンは、CBと共に最後尾でビルドアップに加わった後、前線にポジションを移し、外・内をオーバーラップしてチャンスメイクをする。

 この戦い方でチャンスを作ったのが、24分のシーンだ。

24分のシーン➀

 CBの位置に落ちたロバートソンが、ダイクからボールを受ける。すると、空けた位置に、マクアリスターが移動し、ボールを受ける。ここで、フラーフェンベルフは、ポジションを修正し、縦でボールを受けようとする。ここでフラーフェンベルフにボールが入れば、そこから前進することができる。その狙いは上手くいかなかったため、最終的にはアリソンまでボールを下げることとなる。

 しかし、アリソンは、サラーにロングフィード。相手を引き付けてからロングフィードをすることで、中盤のスペースを利用することができる。

24分のシーン➁

 サラーはボールを収め、マクアリスターに繋ぐ。すると、後ろにいたロバートソンがスプリントし、高い位置を取る。マクアリスターはジョタに繋ぎ、ジョタはロバートソンとのパス交換で、ポケットに侵入する。

 得点には至らなかったが、➀ビルドアップで前進を試みる➁相手が前に来た結果➀が上手くいかない場合、DFの裏あるいは中盤のスペースにロングフィードを狙う、という理想が上手く実現されたプレーであった。

 とはいえ、前半はイプスウィッチのチャンスが多い展開。19分のCKからの決定機、31分のCKからのロングカウンターからのハッチンソンのシュートチャンスなどあるも、決めきれず。リバプールは、押し込むも、崩し切れず、決定機を作ることが出来ない。前半は、0-0のまま終了する。

後半

 リバプールは、クアンザに代えてコナテを投入。後半もリバプールがボールを持つ。前半と異なり、後半はリバプールにチャンスが増える。

 48分、右からソボスライのサイドチェンジで、ディアスにボールが回る。ディアスは、中に切り込み、フィニッシュまで持ち込む。ここでも、ロバートソンは、後ろからオーバーラップを行い、ボールホルダーの選択肢を増やす。

 54分、アーノルドとソボスライが低い位置でワンツーをし、中央を突破。そこで、オーバーラップしてきたロバートソンに展開してクロス。中でアーノルドがディアスに落とし、決定機も、外してしまう。続けて57分のチャンスも、ジョタが決めきれない。

  

 しかし59分、リバプールは先制に成功する。中央でボールを持ったアーノルドが、サラーに素晴らしいスルーパス。これをおさめ、最後はジョタがゴール。このシーン、アーノルドのパスはもちろん素晴らしかったが、アーノルドに至るまでの、フラーフェンベルフのポジショニングが素晴らしかった。

得点シーン

 ダイクがボールホルダー。ダイクから、アリソン、コナテへとボールが回る。ここで、フラーフェンベルフは、ボールホルダーへのフォローに行く。すると、マーカーであるハッチンソンがついてくる。そこで、フラーフェンベルフは、ポジションを前のスペースに移し、コナテからボールを受ける。ここでターンをし、アーノルドへとボールを繋ぎチャンスの起点となった。

 一度足元で受ける動きをしたが、ボールを受けれない場合に、ポジションチェンジを再度行いボールを受けるというフローは、サッカーの基本だが、繰り返し行うのが難しい。フラーフェンベルフは、試合を通して、この動きを実践できており、それが得点につながった。イプスウィッチとしては、疲れ、あるいは一瞬の油断か、前線と中盤の間にスペースを与えてしまった。リバプールのような強豪相手に隙を見せたら、直ちに失点してしまうことが、再確認されたシーンであった。

 続けて64分、ダイクからサラーへの斜めのロングボール。これをサラーがおさめ、ソボスライとワンツーからゴール。下からのビルドアップによる得点に続き、ロングボール1本からも得点を取ることができた。

 イプスウィッチは、52分にPKがオフサイドで取り消されてしまう。その後もチャンスはあるが、決定機と呼べるものは中々こない。リードしたリバプールを逆転するのは至難の業である。

 試合はそのまま2-0で終了。遠藤の出番はなかった。

 

総評

 イプスウィッチは、前半は良い戦いをしていたが、後半失速。やはり、人基準の守備は、フルタイム持たないことが課題か。前半のチャンスを決めきらなければ、リバプール相手に勝ち点を取ることはできない。もっとも、デラップ、バーンズ(負傷交代したのは残念)を中心に良い攻撃が出来ていたので今後に期待。

 リバプールは、スロットの戦術が浸透しきっていないにもかかわらず、上々の出だし。変則的なビルドアップは、チームが抱える選手の特徴を考慮したものとして、高く評価できるであろう。これが、強豪相手となったとき、どうなるかが今後の注目ポイント。今節は、特にロバートソン、フラーフェンベルフが、チームの戦い方を実践できており良かった。

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